がん化学療法

当科の化学療法の特徴としては、抗がん剤の時間治療と5-FU系の製剤を使用した際の血しょう5-FU濃度のモニタリングです。

時間治療とは、正常細胞のDNAのSphaseの分裂の割合が、夜間低く昼間高いことにより、夜間に5-FU濃度を上昇させることにより、副作用を抑えて抗腫瘍効果の発現を増大することを目的としています。

5-FUのTDMは新潟薬科大学との共同研究により、平成13年から施行しています。

初期は5-FUの点滴時の濃度測定のみでしたが、最近ではS-1 Xelodaなどの5-FUの経口剤を投与した際の5-FU濃度も測定可能となりました。

この濃度測定により個別化した5-FUの投与量が決定できるようになりました。

大腸がんの化学療法から開始し、胃癌、膵臓癌、胆道癌などの癌腫でも個別化投与を拡大しています。その内容に関しては下記の学会でも報告し論文化しております。

特に最近ではあるレジメンが効果がなくなった際に5-FU濃度を測定して、十分な濃度がでてレジメンの効果がない場合には他の異なったレジメンに変更しています。

しかし、十分な濃度が出ていない場合には5-FUの濃度測定をしながら安全性を確保したうえで5-FUの投与量を増量しています。

大腸がんで67例、胆道癌で38例の実績を認めています。

また、S-1で副作用が生じた場合にS-1の投与量を減量するわけですが、当科では隔日投与という1日おきに投与する方法を用いて減量しており、良好な成績を得ています。

これら個人に適した個別化治療を目指して当科の癌化学療法を施行しています。

胃癌科学療法のkeydrug

経口摂取可能な切除不能・再発胃癌に対する標準治療としてはS-1+CDDPであることがSPIRITS trialで発表されました。

PSが良好で肝腎機能が正常な患者さんでは、1stでS-1/CDDP、2ndでP(+)はnab-PXL, H(+)ではIRISを選択しています。

初期から腹水やP(+)の患者さんでは、1st nab-PXL 2nd S-1/CDDPを原則としています。

大腸癌科学療法のkeydrug

切除不能再発 大腸癌ではKras wildでは1st FOLFOX(Xelox S-1)+Cetuximab or Panitumumab かFOLFIRI(IRIS)+Cetuximab or Panitumumabで2ndではFOLFIRI+Bevacizumab or FOLFOX+Bevacizumabを選択しています。

Kras mutantでは、1st FOLFOX(Xelox SOX)+Bevacizumab or FOLFIRI+Bevacizumabを施行し、2nd でFOLFIRI or FOLFOXを選択します。

特に、初回の化学療法時やPDとなった際に5-FUの血しょう中の濃度を測定し、1コース当たりのAUCを算出し、十分なAUCが得られているか否かで、レジメン選択の基準としています。

いわゆるtailor dose chemotherapy(個別化化学療法)を実践します。
この5-FU濃度は新潟薬科大学(若林教授、薬物治療学研究室)との共同研究で実現したものです。

膵臓癌では1st GEM/S-1 でS-1の5-FU濃度測定を施行しています。

胆道癌では、胆嚢癌1st GEM/CDDP 2nd GEM/S-1 胆管癌(肝内 肝外 十二指腸乳頭部)では1st GEM/S-1 2nd GEM/CDDPで施行しています。

口演

肝切除で S-1 の 5-FU 濃度が低値に
胆道癌術後の化学療法では、術式を考慮して個別化を

2011年2月3日 宗岡克樹(新津医療センター病院外科)カテゴリ:消化器疾患・癌
2011年10月29日に行われた第49回日本癌治療学会学術集会で、「肝切除がS-1の薬物動態に及ぼす影響:胆道癌術後の化学療法では術式を考慮すべきである」と題して発表した内容の一部を報告する。

胆道癌において、手術術式はS-1投与後の血清5-FU濃度に影響を与える。特に肝切除後(葉切除以上)の患者ではS-1投与時の5-FU濃度が低値を示すことが多いので、留意すべきである。

以下詳細は「m3.com学会レポート記事」に掲載されています。

消化器癌の個別化医療